【ワーク・イン・プログレス】北九州で活動する劇団言魂代表・山口大器さんに作品との向き合い方を伺ってきた

福岡

「演劇は劇場でお客さんと出会って完成する」

九州沖縄で頑張る人を応援する「聴くけん!!九州」。

第14回目となる今回は、福岡県北九州市で活動する劇団言魂(ことだま)の代表「山口大器(やまぐちひろき)さん」にお話を伺いました。

2020年10月4日に、北九州市の枝光本町アイアンシアターで行なわれたリーディング公演「本公演へ向けたワーク・イン・プログレス『こえの聴こえる』」について、たくさん語っていただきました。

劇団言魂の代表、山口さんはこんな人

山口さんは2014年に結成された劇団言魂の代表と同時に、作家・演出家としても活動されています。

作家として2019年に自作「量子の歌声」で第9回九州戯曲賞を受賞されるなど、演劇におけるキャリアを着実に歩まれています。今回行われる公演は、新型コロナウイルスの影響で延期になった同名作品の振替え公演に向けた、ブラッシュアップのための公演です。

今回の公演は、アイアンシアターが開催している「舞台芸術の灯りを消さないため」との理念の元開催された「灯プロジェクト」の一環。感染症対策として「舞台の四方を紗幕で囲む」「1時間に一回の換気」「役者・スタッフはマスク着用」が採られていました。

【山口大器さん】
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劇団として、北九州外での活動も増えつつある

ーー劇団言魂について紹介してください。

2014年に北九州市立大学ひびきのキャンパスのメンバーを中心に立ち上げた劇団です。

その後、卒業やメンバーの入れ替わりを経て現在の形になりました。平均年齢22歳の若手劇団です。2019年には、北九州芸術劇場主催の「劇トツ×20分」で優勝しました。

ーー劇団言魂さんは今劇団員は何人でやられているのでしょうか。

今のところ4人なのですが、この間(10月18日)オーディションをしたので、新メンバーが増える予定です。

活動拠点は北九州市で、公演自体は北九州で行なうことが多いのですが、福岡市や宮崎県での活動のお話をいただいたこともあります。

ーー今回のリーディング公演の特徴やアピールポイントを教えてください。

今回のリーディングは、ワーク・イン・プログレスの形をとっています。

ワーク・イン・プログレスは、上演前・創作途中の作品をお客さんの前で公開し「本公演に向けてその感触を確かめブラッシュアップする」「お客さんにも演劇の創作過程が見てもらい、新たな楽しみ方をしてもらおう」というもの。

2020年4月に北九州芸術劇場小劇場で公演予定だった作品が延期になりました。その時「創作途中だった作品をより良い形で延期公演を迎えたい」と思い企画を始めました。

公演後にお客様とディスカッションをするワーク・イン・プログレス

ーーワークインプログレスはリーディング公演をして、その後お客様とディスカッションする時間を設けていましたよね。より作品をブラッシュアップするための取り組みとの認識ですか?

基本的には「ただ読むだけでなく、本を持ちながら実際に上演すること」がポイントです。

「実際に見に来て頂いたお客様のアンケート」「YouTubeの配信でご覧いただいたお客様のWebアンケート」を回収し、公演後のディスカッションを行ないます。アフタートークのような形で「こういった作品でした」と説明して、作品に関する質問をお客様から受け付けます。

戯曲の公開もしていたので、それも踏まえた上でお客様の反応をお伺いするという形ですね。

ーー公演後のディスカッション部分に関して、率直にどのように感じられましたか。

難しかったです(笑)

作家として「作品に関してここは言いたくないな」とのせめぎ合いもありました。でも、あの形でお客様と作品について語り合えたのはすごく有意義だったと思います。

ーー自分じゃ気づかなかった意見も出てきたということでしょうか。

広い意味ではそうですね。自分が想定したもの以上の受け取り方をしていただいたと言いますか、良い意味での誤算がありました。

お客様の感想を聞いて「出来上がりつつある作品を大事にしたい」とも思ったので、一度挑戦してみたのは大きな収穫でした。

ーー稽古を拝見しましたが、本を手に持ったリーディング公演なのに役者の動きや音響照明などを作りこんでいたのが印象的でした。

それに関しては少しやり過ぎちゃいました。

本当に今回の俳優さんに対応していただきました。リーディングなので、極端に言えば横に並んでテキストを読むだけでも大丈夫なんですが、「リーディングでもセリフを覚えて欲しい」との気持ちも持っていました。

北九州芸術劇場が以前に開催していた「リーディングセッション」公演を観劇した経験や、「シアターラボ」企画で僕がリーディング公演の演出を手がけた経験なども踏まえて、自分の中でのリーディング公演に対する解釈の幅が広くなっていました。

リーディング公演の、演出面を作り込むことに対するハードルが低い面もあったと思います。

ーー事前の稽古はオンラインのみだったのでしょうか。

本番が10月4日で、初回稽古は小屋入り前の一週間9月の28日だったのですが、そこから何度かZoomで稽古をしました。

オンラインでの稽古は感染症対策ももちろんなのですが、遠方に住んでいらっしゃる俳優さんも多かったので、無理に集まることは避けました。

今回の公演を踏まえ、更なる作品のブラッシュアップを

ーー公演を終えてのお客様からのアンケートはどうでしたか。

沢山アンケートを記載していただき、大変感謝しています。

アンケートを読ませていただくと、「伝わってほしいところが伝わっている」「ここはこうじゃないほうが」など、様々なご意見がありました。

もちろん、本公演に向けてその意見を全て受け入れることは無理ですが、私たちが作ろうとしている作品に対して言葉をいただけたことが、なにより有難かったです。

ーー山口さん自身も作品に対する見方が変わったり、新しいアイデアが湧いたりしたのでしょうか。

具体的に固まっていませんが、ぼんやりと「こういうことをもっと描きたいな」「こういうところをもっと踏み込めるな」と、作品に込めるメッセージの幅をもっと広げられそうです。

今も作品を練っている最中です。

ーー「こえの聴こえる」は来年の4月に本公演を行なうとの予定ですが、そこでまたガラッと作品が変わる可能性もあるということですか。

可能性はゼロじゃないですね(笑)

2020年4月に一度YouTubeでオンラインでリーディングを公開したのですが、そこからも既に大きく変わっています。そちらを知っている方からは「すでにこんなに変わっているんだ」との感想をいただきました。

しかし、作品の芯の部分に通っているメッセージ性のようなものは同じです。来年の4月に向けて「この作品がどのように成長していくのか」お客様には楽しんでいただけると思っています。

ーー稽古中は作者である山口さんも不意に笑ったり驚かれたりしているのが印象的でした。

それも良し悪しだと思うのですが、やはり台詞を役者の方が言葉にすることで想定した以上のものが生まれると純粋に嬉しいのですね。それは素直に大切にしたいなと思っています。

稽古は純粋に楽しみながら見ていますが、リアクションが大きいので「俳優さんがうるさいだろうな」と反省しています。

ーー公演を終えてみて良かったことは何ですか?

この企画をしてよかったと思っています。来年の本公演に向けてたくさんの手がかりを得られたこと、中間点として作品を公開して「この方向で大きくは間違っていない」と確信を得たことが理由です。

この世情で演劇ができる環境に少しずつ戻っている中、再会への一歩を劇団言魂らしく運べたことも大きいです。稽古期間は1週間と短くみなさんが直接会うのも小屋入りが初めての企画でしたが、その身軽さが劇団として公演を再開できたポイントだったと感じています。

宮崎県にラジオドラマを創りに行ったり、北九州芸術劇場のSNS投稿用の数十秒作品を作成しましたが、感染拡大後に劇場で公演をするのは初めてです。

僕は「演劇は生で見たい、作りたい」との気持ちがあるので、劇場公演というステップに行けたのが良かったと感じる点です。

“書く”行為は孤独なもの

ーー今回の公演までに苦しかったことはありますか?

色々とありますが、戯曲を書き直していて「書くのはやっぱり孤独なものだな」と感じました。

自粛期間で孤独には慣れたと思ってたんですが。

ーー苦しい時にはどうやって乗り越えましたか?

がんばりました(笑)

書き終えたから言えるんですが、苦しいのは当たり前なので「こうしたら苦しみから解放された」みたいな方法はないかもしれません。これからも苦しんでいくと思っています。

色々な先輩作家の意見を伺っていると「孤独だ」「苦しい」と聞くので、それが本を書くということなんだろうなと感じています。

ーー孤独感が限界に達した時に取る行動というのはありますか

「これをしたら落ち着く」ルーティンはまだ見つかっていないのですが、散歩はよくします。

煮詰まった時に演劇を見ると糸口をつかめることは多いと感じています。面白い作品を見ると「演劇とはこうだった」との方向に思考が行くので。

「人間同士の間で何かが起こっている状態」にワクワクする

ーー演劇に取り組む上で大切にしていることを教えてください。

一言でいうと「ワクワクするかどうか」

「心が動く」「その場に一緒にいて楽しい」など、「人間同士の間で何かが起こっている状態」「演劇的に何かが起こっている状態」を感じる時に、ワクワクしてるなと思います。

この間、オーディションで新しい人と出会ってお互いにコミュニケーションを取った時に「この人たちと作品を作ったら面白そうだな」と感じたので。それもワクワクした瞬間だなと思いますね。

ーーでは、稽古中などにワクワク感を感じなかった時はどのように対処されるのでしょうか。

あまり良くないのかもしれませんが、素直に「面白くない」と伝えて稽古を止めます。その後に何が起こっていないのかを一緒に考えます。

ーー何がうまくいってないのかについて、役者の方とディスカッションをされるということでしょうか。

ある意味ではディスカッションですね。「何がうまくいっていないのだろうか」と俳優の方に聞きますし、作品に関して話し合う形でコミュニケーションをとります。

ーー今回のワークインプログレスの稽古を拝見していて思ったのですが、俳優の方からも「ここはこうした方がいい」との声が積極的に上がっていましたね。あれは山口さん的にも心強かったですか。

心強かったですね。「お芝居に新しいものを投げ入れる方と演劇をしたいな」と僕も感じていますので、そういった役者の方に支えられています。今回の公演ではみんな楽しんでやってくれていたので、非常に助けられました。

もちろん、俳優として「全体のバランスを取る人」「器用にいろいろ対応してくれる人」など、それぞれの個性はありますが。

今回は期間が短かったのでこう言うのも変なのですが、役者の方には本当に助けられたと思います。

ーー今回は感染症対策で紗幕で舞台の四方を囲んでいらっしゃいましたが、あれはどのように感じられましたか。

紗幕で区切られて少し手が届かない感じが、「幻想的だな」「照明が当たるとすごく綺麗だな」と思いました。

ただ、今回は期間の短さもあって舞台を活かし切った演出はできなかったなと感じています。

もう一度同じシアターの同じ企画で公演をする機会がありますが、「あの状態でどうやったらより面白い作品を作れるのか」。演出家として少し挑戦したいところではありますね。

ーー劇場での稽古中も感染症対策として1時間に1回換気を挟まれていましたが、あれも大変そうでしたね。

大変でしたが、没頭しすぎると休憩を取らずにいくらでも稽古をしてしまいます。1時間に1回の休憩タイムとして捉えると、全体の空気のリフレッシュにもなって良かったなと感じています。

来年の4月までに3本の公演を予定

ーー来年に向けて考えていることを教えてください。

来年はひとまず今回のリーディングした作品をさらに面白いものにしていきます。とてもワクワクしています。

あとは、演劇を作り続けたいので、この作品もこれから作るたくさんの作品を大切に育てていきたいと思っています。

12月末に福岡県で活躍する若手演劇団体による短編演劇公演を行ないます。2月にもJR九州ホールで「福岡”題名のない”演劇祭」に参加しますし、4月の本公演と合わせて3本の予定があります。

ーーオーディションで加わった新しいメンバーの方ともともに新しい劇団言魂としての公演が期待できますね。

オーディション合格者の方と一緒に公演しようと思っています。12月と2月はそれぞれ新作なので「過密だな」と感じています(笑)

劇場から出たら心が軽くなる作品を作りたい

ーー読者へメッセージをお願いします。

劇場でお客さんをお迎えして、ものすごく緊張しました。

僕たちは、演劇を作っています。「演劇は劇場でお客さんと出会って完成するんだな」「物語の一部になって物語を目撃できる」と考えています。そして、少しだけ「劇場から出た時に心が軽くなる作品を作りたい」と思っています。

今後も精力的に活動していきますし、来年「こえの聴こえる」をもっと面白くして北九州芸術劇場で皆さんをお待ちしております。

ーー本日はありがとうございました!

【取材後記】若い才能の今後に期待

今回の取材を通して、舞台演劇に対するスタンスを自問自答しながら語っていた姿が印象的だった山口さん。

今回のインタビューでは、心の底から演劇が好きなのだと感じさせてくれました。

まだまだ表現者にとっては厳しい状況が続くことが予想されますが、山口さんと劇団言魂の今後の活躍がいち観客としても、今から楽しみです。

この場を借りて、取材にご協力頂いた山口さんに厚く御礼申し上げます。

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この記事はマインドマイスターで構成しました。

この記事を書いた人
江尻圭佑

福岡県北九州市在住のWebライター。執筆業の傍ら、たまに舞台大道具もやるマルチクリエイター。関心の深い領域は心理学やサイエンス、ライフハック系など多岐に渡る。

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